ゴンベ病院視察とウガンダの医療事情考察

ウガンダ、カンパラのヘビーな交通渋滞を通り抜け、2時間かけて地域医療の現状を視察にゴンベ病院へ。

50年ほど前はイギリスが、今は中国が道路を整備してくれている様で、ウガンダ人は自らインフラを整備するという動きはしないようです。

ウガンダの公立病院は「病院レファラルシステム」という仕組みで4階層に分類されています。

トップは国立病院(National Hospital)で、先日訪問したムラゴ病院とブタビカ病院(精神科専門)の2院です。

次の階層は地域中核病院(Regional Referral Hospital)といい、ウガンダ国内に14カ所有り、ゴンベはこの1つです。

その次は県病院(General Hospital)で、各県に1つずつあります。

最下層にあたるのは、地域のヘルスセンターでそれをさらに4セクションに分類しています。

都市部の病院(ムラゴ病院)より衛生状況が悪いことを想定していましたが、トルコの支援を受け、あっという間にすっかり綺麗になり、トイレもまさかの水洗でウガンダ一の病院ムラゴよりも大変綺麗で、びっくりしました。

病棟は男性用、女性用、マタニティーの3室のみ。結核患者もHIV患者も、けが人もみんな一緒です。治療は一人のスタッフ(多分、看護助手)がリストに書かれた指示通りに順次ベッドで行います。入院している患者さんは、昔ながらの伝統医療(薬草医や魔法医)を信奉している人も多く、院内では使用を禁じられている薬草をこっそり使っていたり(日本で浸透している「飲み合わせ、食べ合わせ」の概念はない)、少し良くなると薬を飲まなくなりいつまでも結核などの感染症が治りきらないなど、病気を治すことへの意識の低さ(医療知識のなさ?)も治療を困難にしているようです。

妊産婦の死亡率は1万人中32人、5歳未満児の死亡率は1万人中900人(1位:肺炎、2位:貧血、3位:敗血症)。
新生児死亡率は1万人中440人、一人の女性が出産する子供の平均は6人です。
鉄分が豊富な肥沃な土地なので、貧血が多いのには驚きましたが、入院患者に貧血の人がいたのでその原因を尋ねると「流産の後出血が止まらず貧血になっている」とのこと。食からの鉄分補給は問題がなかったとしても、医療の処置による貧血が防げず、全国的にもこのような患者が多いのかもしれません。

ちなみにウガンダでは、高熱が出ると診断もせずにすぐに「マラリア」だと認識する人が多くいる様で、2年以上前の統計では「マラリア」による死者の数がとても多かったそうです。近年、マラリア感染者が減少した訳ではなく、迅速マラリア診断キッド等の導入によりマラリアか他の疾患かの鑑別がなされる様になり、統計の数値が変わったのではないかと言われています(統計データではマラリアによる死亡者の数が減少)。

〈ウガンダの病院で働く医療従事者〉
・医者 Medical Doctor
・準医師 Clinical Officer(日本にはない資格ですが、3年ほどの教育を受けてなれる)
・看護師 Registered Nurse
・助産師 Registered Midwife
・準看護師 Enrolled Nurse
・準助産師 Enrolled Midwife
・看護助手 Nursing Assistant
・薬剤師 Pharmacist
・放射線技師 Radiographer
・検査技師 Lab Technician
・エンジニア Biomedical/mechanical/electrical engineer

外来は、有料待合室と無料待合室に分かれていて、有料の方では医師の診察を受けることができます。無料の方は医療スタッフ(準医師または看護師)が薬の指示を出し薬局で受け取って終わりです。

医師の給与は決して高くなく、ストライキなどで診療がストップすることもあるとか。
給与の滞納等もよくあるらしく、アルバイトをしたり、外で開業している医師も多く、午後になると医師不在、ひどい場合ずっといないということもあるそうです。昼食後に私達が面会した医師は、唐突に「お金が必要だ」と切り出し、「院内に電力が必要なので太陽光発電システムを導入してほしい」とのこと。「白人(黒人以外全ての人を白人と分類するそうです)は支援をする人」という前提でのことでしょうか。ちょっと面食らいました。

院内の食堂
ウガンダの伝統食

ウガンダの伝統食(4000シリング=120円ほど)黄色いのはマトケ(甘くない調理用バナナを蒸したりゆでたりし、ときにマッシュして蒸したもの)、白いのはポショ(とうもろこし粉を湯で練って蒸したもの)と焼き飯、スープ(ピーナッツをすりつぶしたものにロイコ(化学調味料、日本でいう味の素)と塩で味付け)

詳しくは「世界の料理」参照

そんな中、日本の洗浄消毒器具がJICAから提供され活用されている様子や、5S の啓蒙活動のポスターが貼られていたり、日本の方々の地道な活動の痕跡を見れて嬉しくなりました。JICA(日本政府)の方針として、「保健インフラマネジメントの強化」に重点を置き、各国の支援合戦のレースに加わること無く地道に保健サービス提供の拡大や質、安全性の向上、効率・効果の改善、監督機能向上を目的とした保健サービス提供の為の包括的システムの構築・強化を目指しているそうです。今後益々重要となるのは、医療機材の導入に伴いそれを有効活用できる技師等の人財の育成だそうです。教育をしても人事異動によりその知識の活用が定着しないと言う課題もあるそうで、なかなか困難な道のりでは有りますが、技術大国としての日本のこれからの益々の活躍が楽しみでもあります。

ウガンダではSTD(性感染症、特にHIV)が多いため、啓発ポスターが院内の至る所に貼られていました。町中にもHIV検査を促す広告がありました。

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